2020年10月16日金曜日

裁判手続きにおけるWEB会議システムの導入について

 裁判所へ出頭せずに、事務所にいながら、顔を合わせて裁判手続きができる。

 古い制度が色濃く残る裁判の世界において、ようやく「現代化」が始まりました。

 つまり、既に報道もあったのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判所の民事訴訟期日も、ようやくWEB会議システムを使ってできるようになったのです。これにより、出廷せずに、事務所にいながら裁判に顔を合わせて出席できる場合ができました。ちなみに、裁判所での使うWEB会議システムは、Microsoft Teamsです。

 裁判手続きのおけるIT化は今後進展していく予定と聞いております。

 ところ、民事裁判について簡単に説明しますと、民事裁判を起こすと、当事者(又は訴訟代理人)は、裁判所が遠隔地などの場合は電話で手続き(電話会議)を進められるなどの例外を除いては、原則として、口頭弁論又は弁論準備手続期日に出席するために、裁判所へ出かけることが必要です。

 しかも、民事裁判の場合は、裁判所での期日に出かける前に、準備書面(こちら側の主張や相手方の主張に対する反論を記載したもの)や書証の写しを、予め裁判所と相手方に提出します。そのため、裁判所での期日では、概ね5~10分程度、長くても30分程度で終わる場合が多いかと思います。もちろん、裁判官から質問があったり、相手方に対して質問をしたりなど重要なことをするのですが、電話で済むことも多いというのが実情です。しかし、その数分のために、当事者は、裁判所への出廷が必須なのです。  

 ちなみに、前述のとおり、電話会議という制度もあります。しかし、この制度は、「遠隔地」でなければ利用できません。当事務所がある町田からは、地裁がある霞が関も、立川も、横浜も、小田原も、どこも片道1時間以上かかりますが、「遠隔地」とはみなされません。電話会議の方法は認められず、必ず、裁判所へ出かけなければなりません。

 そのため、当事務所にとって、往復2時間以上を移動に費やすために、時間と費用が無駄にかかっていました。

 さて、長々と今までの制度を話してきましたが、今年の2月から、ようやく、一部の地方裁判所(※)において、WEB会議システムの利用ができるようになりました。

 先ほど述べた通り、当事務所からはどこの裁判所も遠いために、できれば、WEBで行いたいと思っていましたが、制度が始まった今年の3月ころから、コロナ禍が広まり始め、裁判自体が停止するようになりました。

 現在も、コロナ禍の影響で裁判自体の進展が遅く、そもそも、裁判期日自体が入らないという日々が続いています。

 それが、ようやく、今年の9月に、横浜地裁に係属しているある民事裁判事件において、WEBによる手続きの予定が入りました。当事務所の第1号事件です。 

 WEBによる手続きが進めば、裁判所への往復という時間と費用を省くことができるようになり、その分、ご依頼者様への交通費のご負担も小さくなることが予想されます。

 ただ、このWEB制度が始まったからと言って、全く出廷しなくてもよいというものではなく、第1回口頭弁論期日や証人・当事者尋問手続は出廷を要しますし、やはり、直接話をしたいという案件では、やはり出廷することになるかと思います。

 とはいっても、ようやく、裁判にも「現代化」が始まりました。 

(※)現時点は、東京地裁本庁の一部、横浜地裁本庁の一部などが対象です。東京地裁立川支部や横浜地裁の各支部、簡易裁判所は対象外です。

                              弁護士 廣田

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